プログレ話(5) - ジェネシス -
ジェネシスを語る上で外せない二人。
ジェネシスを捨てた男・ピーター・ガブリエル
ジェネシスの面白さは、ピーター・ガブリエルの演劇性に依存していたと思う。
ジェネシスとジェスロ・タルあたりに、演劇や文学との融合を強く感じる。
そんな芝居がかった作風は、ピーター・ガブリエルの脱退で消えていき、分かりやすいポップス色を強めていく。
ジェネシスを駄目にして成功させた男・フィル・コリンズ
駄目にしたかどうかは実は微妙な気もする。少なくともセールスという点では大成功しバンドとしての全盛期を迎えるわけだから。
『そして3人が残った』(1978年)以降、もう自分の好きなジェネシスではなくなった。『ディシプリン』以降のキング・クリムゾン、『ロンリー・ハート』以降のイエスのように。
『怪奇骨董音楽箱(Nursery Cryme)』(1971年)
『フォックストロット(Foxtrot)』(1972年)
『月影の騎士(Selling England By The Pound)』(1973年)
ジェネシスなら、まずはこの3枚。
ナーサリー・クライム(怪奇骨董音楽箱)(DVD付)(紙ジャケット仕様)
- アーティスト: ジェネシス
- 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
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プログレ話(4) - イエス -
イエスとは、クリス・スクワイアだ。
リック・ウェイクマンはハノンばかりを練習しているうちに独創性を失った退屈なピアニストにしか思えない。唯一気に入っているのは、『ヘンリー八世の六人の妻』。
だから、リック・ウェイクマンが参加していなくて脂がのっている作品はというと、『リレイヤー』一択になる。
イエスはソリストの集まりと言って良い。我も我もと目立ちたがる(ように見える)。普通、音楽の基礎になるのはベースでありドラムスだろう。
その中で、クリス・スクワイアは縦横無尽(気持ちの赴くまま好き勝手)にベースを響かせる。その音を追っていくだけで、笑いがこみあげてくる。
それで良いのか?いいんです!
それがイエスの魅力だ。
ライブでは完璧にアルバムを再現すると言わしめたクラクラするくらいの高度な演奏技術と創意に感動する。
プログレ話(3) - エマーソン・レイク・アンド・パーマー -
最も早く陳腐化したプログレバンドだと思う。
MOOGの音色にプログレッシブを感じたのは今は昔、80年代にはその音色に古さを感じた(今は一周まわって斬新なサウンドということになるのかな?)。
音楽的な胡散臭さもある。
グールドの演奏するバッハは称賛されるが、ベートーヴェン「田園」のピアノバージョンはどうだ?
テクニックのひけらかしにしか見えないホロビッツの「カルメン」は?
「カルメン」はまだしも、減衰系の音で構成されるピアノの世界で「田園」は相当無理があると思う。
成功例は、オーケストラの魔術師・ラヴェルの編曲群位なものだ。
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『展覧会の絵』は胡散臭さの二乗ってことになる。
元はピアノ曲。それをオケに書き換えたラヴェル版。それも下敷きにしつつ、ロックを試みたELP版。
走り気味で疾走感のあるカール・パーマーのドラム、堅実なベースと共に伸びやかな美声も誇らしいグレッグ・レイク、本線は元よりインプロビゼーションの創造性にその才能の高さを示すキース・エマーソン。
たまにどうしても聴きたくなる名盤だ。後にスタジオ版を作ってしまったのは蛇足で、このライブ盤のみで『展覧会の絵』は完結している。
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ELPでは『ラヴ・ビーチ』が感慨深い。当時、もうプログレはオールド・ウェーブ扱いで、“やっつけ仕事”でジャケ写も能天気、トホホ感が強かった。ただし、聴いてみると中身は素晴らしく、「将校と紳士の回顧録」は、堂々とした老兵の黄昏といった趣きに感動し、ああ終わりなのか・・・と泣けた(イントロ部はショパンだった)。
その後、幾多の変遷を重ねて、復活を遂げるが往時の勢いは取り戻すべくもなく・・・それでもキースがステージにいる、それだけで良かった。
2012年、NHKの大河ドラマ『平清盛』で吉松隆編曲による『タルカス』(1971年)オーケストラ・バージョンが流れて驚いた。
クラシック、ジャズをロックに融合したELPの代表作が、今度はクラシック畑に返り咲いた。
2013年3月20日、【吉松 隆 還暦コンサート≪鳥の響展≫】でキースは吉松氏のためにステージに上がり、タルカスを弾きつつ誕生日を祝った。その場に立ち会えたことを感謝しつつ、それがキース・エマーソンを見た最後になってしまったことが残念で仕方がない。
キースがそこにいる、それだけで良かったのに・・・。
このグランドピアノを弾いた姿を忘れない
プログレ話(2) - キング・クリムゾン -
2015年の渋谷ライブは全て行った。
それを思い出すに十分なライブ盤。
ラディカル・アクション~KING CRIMSON ライヴ・イン・ジャパン+モア(Blu-ray Disc付)
- アーティスト: キング・クリムゾン
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クリムゾン・キングの終焉。
そう思った。
キング・クリムゾンは後ろを振り向かないバンド。
作品ごとに違った顔を見せた。
ロバート・フリップの意志の元、メンバーの選定もされるから、全期で眺めると驚くほど参加メンバーが多いバンドだ。
『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』(2003年)を最後にスタジオアルバム(新作)は発表されていない。
2015年の来日では、今まで聴きたくても演奏してもらえなかった作品たちをライブで聴けた。
「21世紀~」、「太陽と戦慄」、「レッド」などなど・・・クリムゾンからの最後のプレゼントだと思って、涙を流しながら聴いていた。
ライブ後、写真まで撮らせてくれた。
2018年は行かなかった。自分の中でのキング・クリムゾンは終わっていたから。
プログレ話(1) - ピンク・フロイド -
邦題がとにかくダサい。
なんだこれ?
『永遠/TOWA』(2014年)(原題:The Endless River)
『原子心母』はAtom Heart Motherの直訳にしても洒落てる。
『狂気』・・・良し悪しに関わらず、マンモス的な世界的名盤だから、アルバムジャケットとともに“狂気”という文字はこのアルバムを示すアイコンになっている。
だたし、この言葉に引っ張られたのか、なんともセンスがないのが『鬱』『対/TSUI』『永遠/TOWA』だと思う。
買う気にならなかったよ。
ピンク・フロイドというブランドは、ぎりぎり『ザ・ウォール』(1979年)までだ。『ファイナル・カット』(1983年)はロジャー・ウォーターズのソロだろ。
『鬱』(1987年)以降は、デヴィッド・ギルモア色が濃厚だが、ピンク・フロイドを演じきっている。
ロックバンドにはいくつかのタイプがある。
メンバーの個性がバランスよく生かされて、誰かひとりでも欠けたら成立しないタイプ、突出したひとりの個性を生かすためにバンドが存在するタイプなどなど。
ピンク・フロイドは初期にシド・バレットというカリスマを失ったことでピンク・フロイドを演じてきた。
芝居がかったバンドなんだと思う。
『永遠/TOWA』はラストアルバムだろう。
白玉名人のリック・ライトを失ったバンドは再開したとしても、それはピンク・フロイドではない。
クリス・スクワイアのいないイエスと同じ。
『永遠/TOWA』はインストアルバムで詞によるコンセプトの誘導はない。
そこにあるのは、音としてのピンク・フロイドあるあるのオンパレードだ。
音使いや楽器編成など、次はこうなると分かるような作り。
それが不快かというとそんなことはない。だってそれを演奏しているのは間違いなくピンク・フロイドのメンバーなのだがら。
もう一度、『狂気』を演奏してほしい、『アニマルズ』の空飛ぶ豚が見たいと思ったって無理な話だ。それでも、“これぞピンク・フロイド”を聴ける安堵感を求めるファン心理には突き刺さる。
かつて袂を分かったロジャー・ウォーターズは言った。「フロイドの真似事をしただけのニセモノ」だと。
彼は誤っている点はただ一つ。ニセモノではなくホンモノだったことだ。