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ミル、キク、モノ、コト

東宝特撮映画の世界 - 1950年代(ファンタジー映画) -

白夫人の妖恋
1956年度作品
●監督:豊田四郎
●製作:田中友幸
●原作:林房雄
●脚色:八住利雄
●撮影:三浦光雄
特技監督円谷英二
●音楽:團伊玖磨
●美術:三林亮太郎/園真
●録音:下永尚
●照明:石川緑郎
●出演:池部良(許仙)/山口淑子(白娘)/八千草薫(小青)/清川虹子(許仙の姉・{女交}容)/田中春男(李公甫)

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西湖のほとりに住んでいた貧しい若者許仙は、ある雨の日に傘を貸し与えたことから、美しい白娘に結婚を申し込まれる。銀二包の支度金まで手渡されたが、それは、県の倉庫から盗み出された“火"印の銀であった。罪を問われた許仙は、蘇州へ流されたが、美しい白娘と向い合う中で恨みは消え、幸福な愛の生活を送ることとなった。ある日、妻の正体は白蛇の精だと知った許仙は、金山寺に姿を隠した。許仙をあきらめきれぬ白娘は、金山寺に赴いて、許仙を取り戻そうと金山寺を妖術で水攻めにするが、許仙が溺れそうであることに気付き、呪文を止め、自ら濁流に呑まれて姿を消した。
秋になって許仙は刑期を終えて西湖のほとりの故郷に向ったが、その途中、突然白娘が現われた。許仙は驚きのあまり、白娘を蹴とばして逃げたが、ふと気付くと、その場には白い石があるばかりだった。許仙は今さらのように彼女の深い愛情を悟り、この世を捨て白姫と相抱いてはるか蓬莱の島へ飛んでいった。

中国伝説“白蛇伝”に材を取った林房雄原作“白夫人の妖術”を「虹いくたび」の八住利雄が脚色した夢幻劇。監督は「夫婦善哉」の豊田四郎、撮影は「彼奴を逃すな」の三浦光雄。主な出演者は「吸血蛾」の池部良、「土曜日の天使」、「竹の家」(日米合作)の山口淑子、「愛情の決算」の八千草薫、「女房族は訴える」の清川虹子、「愛情の決算」の田中春男など。

ストーリーを補強するための特撮が、画面の色調を損なわず、素晴らしい説得力をもって表現されている。日本初のブルーバック合成が使用された。

イーストマン・カラー色彩による東宝ショウ・ブラザース(香港)合作映画。


何を見るべきか?八千草薫さんしかない。
彼女の愛らしさに惑わされない男がいるなら前に出ろと言いたい。
東宝特撮ヒロインベスト3は?と問われたら、
水野久美フラバラ、サンガイ、マタンゴ他)、
八千草薫(白夫人の妖恋、ガス人間第一号他)、
釈由美子ゴジラ×メカゴジラ他)と答える。

 

孫悟空
1959年度作品
●監督:山本嘉次郎
●製作:田中友幸/宇佐美仁
●脚本:村田武雄/山本嘉次郎
●撮影:小泉一
●特殊技術:荒木秀三郎/渡辺明有川貞昌
特技監督円谷英二
●音楽:團伊玖磨
●美術:北猛夫
●録音:藤縄正一
●照明:大沼正喜
●出演:市川福太郎三蔵法師)/三木のり平孫悟空)/千葉信男(猪八戒)/中村是好沙悟浄)/団令子 (ポン)

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唐の都・長安では飢餓と疫病が続き、帝は天竺にある三蔵経を預ってきて祈れば国の苦しみもなおると考え三蔵法師を天竺に向かわせた。道中、三蔵は孫悟空八戒、悟浄を供につけた。氷河の峠を越えると、仏の申し子の肉を食えば一万年生きられると魔物たちが待ちかまえていた。三蔵を釜ゆでにしよう金角、大旋風が三蔵をさらう銀角、鉄の首カセで三蔵を捕らえる銅角も悟空に倒された。ところが、三蔵は、たとえ悪魔でも殺してはならぬと悟空を叱った。悟空は怒り、自分の山へ帰ってしまう。悪魔大王に三蔵たちは捕えられたが、悟空がかけつけ釜ゆで直前の彼らを助けた。が、悟空は大王の毒気にやられ倒れてしまう。その時、八戒が洞窟の天井を掘り抜き、太陽の光で大王たちは溶けてしまった。三蔵は悟空の死を嘆いた。ポンが観音様の気付薬を持って現れた。それで、悟空は人間になって生き返った。天竺へさしかかる峠についた。ポンの歌声が三蔵法師たちを導くように響いた。

西遊記』から、村田武雄・山本嘉次郎が脚本を執筆、「東京の休日(1958)」の山本嘉次郎が監督したもので、特撮技術を使い動画の手法も併用してファンタジックな味を出そうというもの。撮影は「すずかけの散歩道」の小泉一。


こちらも八千草薫さんが見どころです。キレッキレです。
ミュージカルテイストのファミリー映画なのでしょうが、なぜ八戒がオネエなのかなど、突っ込みどころ満載。脇を固める当時の喜劇俳優陣が面白すぎる!由利徹さんがイイ!
学園祭レベルの芝居と思うなかれ、このリズム感は今の映画では絶対に味わえない。

 

日本誕生
1959年度作品
●監督:稲垣浩
●製作:藤本真澄田中友幸
●脚本:八住利雄菊島隆三
●撮影:山田一夫
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:伊藤熹朔/植田寛
●録音:西川善男
●照明:小島正七
●出演:三船敏郎(小椎命‐日本武尊)/中村鴈治郎景行天皇)/伊豆肇(大椎命)/宝田明(若帯日子命)/久保明五百木之入日子命)/東野英治郎(大伴建日連)/司葉子(弟橘姫)

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十戒」「天地創造」にも匹敵する史劇スペクタクルを日本の風土の中で展開した超大作。物語は、神々の誕生、イザナギイザナミの国造りに始まり、日本武尊須佐之男命をめぐるふたつの物語が並行して進んでいきます。湖を割って登場する八岐の大蛇、嵐に翻弄される船団と、見どころは豊富ですが、なかでも特筆に値するのは、クライマックスの天変地異の壮大なイメージでしょう。真っ赤な炎を吹き上げて熔岩を一面 に噴流させる山、湖畔の木々を押し倒して溢れ出てくる湖水。熔岩は7トン以上の鉄を使用。熔鉱炉で熔鉄とした上に光学合成で人間を飲み込むシーンを作り出しています。また多重合成を取り入れることで、人間のすぐそばに迫った濁流の恐怖を見事に表現。技術の粋を尽くした特撮シーンと、三船敏郎原節子ほか空前のオールスターキャストにより壮大な叙事詩として描き出されています。


東宝映画1000本記念作品。東宝演技陣総出演の大作。
時間的には確かに長いが、それを感じさせない展開。史劇特撮ものとしては、後に『竹取物語』、『ヤマトタケル』もあるが、なぜ今風の解釈をはさむのかが理解に苦しむ。『日本誕生』に足元にも及ばない。この『日本誕生』に見られる趣きと気品を見習ってほしい(もし今後この手の作品が製作されるならだが・・・しばらくないか)。

東宝演技陣総出演の謳い文句どおり、脇役でも良い役者を配置していて楽しませてくれる。
個人的には、ミヤヅ姫の香川京子さんが押し。

特撮・・・人まで人形で表現する円谷特撮の真骨頂(円谷以降、人形を用いた特撮がなくなって味気なくなったと思う)。凄すぎる!