120rpm

ミル、キク、モノ、コト

東宝特撮映画の世界 - 1960年代(ゴジラ以外の怪獣映画) -

モスラ
1961年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●原作:中村真一郎福永武彦堀田善衛
●脚色:関沢新一
●撮影:小泉一
●特殊技術:有川貞昌渡辺明/岸田九一郎
特技監督円谷英二
●音楽:古関裕而
●美術:北猛夫/安倍輝明
●録音:藤縄正一
●出演:フランキー堺(福田善一郎)/小泉博(中条信一)/香川京子(花村ミチ)/田山雅充(中条信二)/ザ・ピーナッツ(小美人)

巨卵から大蛾へ驚異の三段変化!
全世界を襲うモスラの驚異!!!

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美人の歌声が響きわたるとき、神秘の大蛾“モスラ”が目を覚ます。巨大な体躯で東京タワーに繭をかけ幼虫から成虫へ変化するモスラ。特撮史上最大級のセットでの臨場感溢れる都市等、円谷英二による特撮の名シーンが続出。ザ・ピーナッツが歌う元祖「モスラの唄」など見どころ満載。


電線である。細い電線・・・モスラの幼虫が突き進む時の巨大さが際立つ。円谷英二以降の特撮映画でも電柱は出るがスケールがおかしい(電線太すぎ・・・)。その点、庵野監督は『エヴァ』で見せた電線愛をしっかり『シン・ゴジラ』で昇華させてくれてうれしかった。

一発の破壊シーンでの精緻さでは『ラドン』の福岡壊滅シーンに譲るが、トータル的にはこちらが上。ニュー・カークのシーンはどうかと言われるが、製作時の時間的・予算的な制限もあり、十分な内容と評価するべきだと思う。

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1994年発行の『モスラ』の原作本。中村真一郎福永武彦堀田善衛の純文学作家3名により『週刊朝日・別冊』1961年1月号に発表された。

ゴジラ』、『ラドン』のシリアス路線とは異なるファンタジック路線でその後の怪獣映画の幅を広げさせた功績は非常に高い。傑作!

 

宇宙大怪獣ドゴラ
1964年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸/田実泰良
●原作:丘美丈二郎「スペース・モンス」
●脚色:関沢新一
●撮影:小泉一
●特殊技術:有川貞昌/富岡素敬/渡辺明/岸田九一郎
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:北猛夫
●編集:藤井良平
●出演:夏木陽介(駒井)/ダン・ユマ(マーク)/中村伸郎(宗方博士)/小泉博(桐野)/藤山陽子(昌代)

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人口衛星が、突然巨大な宇宙螢に襲われ爆発した。宝石商に五人組の強盗が押し入りるが、奇怪なヒトデのような化け物が現れ逃げていく。ある日、駒井は、怪物が、石炭を吸いあげる光景を目撃する。事件は更に広がり、世界中を震撼させた。防衛軍はロケット弾攻撃を行なうが、怪物の細胞分裂を引き起し、それは無数に殖えてしまう。廃坑から土蜂の大群が現れ、怪物を追いかけ始める。怪物は土蜂にさされると死んでいった。これをヒントに、土蜂の毒素を集め、怪物にふりかけ全滅させることに成功する。

丘美丈二郎の原作を「蟻地獄作戦」の関沢新一が脚色、「モスラ対ゴジラ」の本多猪四郎が監督した空想科画映画。撮影もコンビの小泉一。


ドゴラの起こす自然現象の描写がすばらしい。空に浮かぶクラゲ(?)はイメージとしては斬新でアニメーションとの合成なども興味深く、何とか新怪獣を創造しようという特撮陣の気概がヒシヒシと感じられる。個人的には特撮よりも関沢脚本の軽妙さを楽しむべきものと思っている。世界の危機という割りには、スケール感にやや欠ける。

 

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)
1965年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●脚本:馬淵薫
●撮影:小泉一
●特殊技術:有川貞昌/富岡素敬/岸田九一郎/渡辺明/向山宏
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:北猛夫
●編集:藤井良平
●録音:小沼渡
●出演:ニック・アダムス(ジェームス・ボーエン博士)/高島忠夫(川地堅一郎)/水野久美(戸上李子)/ピーター・マン(リーセンドルフ博士)/土屋嘉男(河井大尉)

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西欧の古典的キャラクター“フランケンシュタインの怪物”を巨大怪人仕立てで怪獣と対決させる。この大胆なアイデア東宝特撮映画ならではのエッセンスを詰め込んで描かれた作品。原爆投下により、行方不明になったフランケンシュタインの心臓が、やがて再生、巨大化!秋田油田の地底から出現した肉食巨獣に戦いを挑む!異形の者の悲劇を描いた本作は、従来の怪獣映画にくらべミニチュアのスケールが大きくなりそれにともなって、怪獣対決もスピーディで生々しいものになった。


ドイツ軍によって持ち去られる“フランケンシュタインの心臓”。言葉を発する者もなく演じられるオープニング。ドームのある原爆ドームが映し出される・・・訪れる悲劇を観客は知っている。研究者の立場で実に身勝手なことを言い続ける主人公3人。
フランケンシュタインの悲劇(不運と言い換えても良いが)は、物言えぬもどかしさがどこまでもついてまわる。土屋嘉男の努力もむなしく・・・のあたりから、絶望感が漂い、なんとも正視に耐えない痛ましさが漂う。
明の関沢新一、暗の馬淵薫(木村武)とそのスタイルを2分する名脚本家を擁した東宝本作と姉妹作『サンダ対ガイラ』は馬淵脚本の大傑作なのは間違いない。

山に大ダコ?
口から糸を吐くクモが出たりする東宝特撮映画、そんなことを気にしてはいけない。

 

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
1966年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸/角田健一郎
●脚本:馬淵薫本多猪四郎
●撮影:小泉一
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:北猛夫
●編集:藤井良平
●録音:刀根紀雄
●出演:ラス・タンブリン(スチュワート博士)/佐原健二(間宮雄三)/水野久美(戸川アケミ)/田崎潤(橋本陸将補)/中村伸郎(喜田教授)

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クローン生物=フランケンシュタインの分裂によってうまれた山の怪獣サンダと、海の怪獣ガイラが骨肉相食む戦いを展開!特撮の見せ場もたっぷりで、冒頭のガイラと大ダコの戦いから、クライマックスの怪獣対決まで怪獣映画の醍醐味が満喫できる快作です。また自衛隊対怪獣の戦いも緻密に描き出され、放電攻撃によるL作戦に投入されるパラボラ兵器、メーサー殺獣光線車も登場。東宝特撮映画が生んだ超兵器の中でも海底軍艦と並びファンの高い人気を集めています。


劇場でいたいけな子供たちにトラウマになるほどの恐怖を嫌というほど植えつけた名作。ハム太郎目当てできた子供が『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』を見た比ではない・・・これも分かりづらいか(-_-;)。

海中から海上をうかがっているガイラの姿、羽田空港で逃げ惑う人を食ってしまう、シャーッ!と叫びながらダーッと走るガイラ・・・腰が抜けるほど怖かった。“明るく楽しい”東宝じゃなかったのか、何ということをしてくれる!
最高じゃないか!!

東宝自衛隊兵器の最高傑作、パラボラ型殺人光線兵器・メーサー殺獣車。この後何度となく他作品にデュープされたガイラへの攻撃シーンは何度見ても強烈過ぎる。

ゴロゴロと壊されていくビル群にしびれ、助けて~!と木にぶら下がっている水野久美さんに興奮した少年時代でした。

 

キングコングの逆襲
1967年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●脚本:馬淵薫
●撮影:小泉一
●特撮監督:円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:北猛夫
●編集:藤井良平
●録音:吉沢昭一
●出演:ローズ・リーズン(カール・ネルソン司令官)/宝田明(野村次郎一尉)/リンダ・ミラー(スーザン・ワトソン)/浜美枝(マダム・ピラニヤ)/天本英世ドクター・フー

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カニコングやキングコング等、魅力的な人気怪獣が登場!

アメリカが生んだモンスター、キングコング。この作品は、そのオリジナルであるRKO映画『キング・コング』の基本設定を踏まえつつも、東宝特撮映画の魅力をたっぷりと詰め込んだ作品。キングコングと対決する怪獣も恐竜ゴロザウルス、大海蛇といったリアルさを追求したものから、後のメカ怪獣の先駆となったメカニコングまでバラエティ豊かに登場。南海の島でのシークエンスと、クライマックスの東京タワー上での戦いは迫力満点!!


東宝創立35周年作品。『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』、『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』と同じく、登場怪獣やロボットの体長が小さめに設定されているので、その分大きなミニチュアが用いられ、質感も悪くない。ただ、画面が明るく(夜の空ですら明るいのが東宝映画)、それがマダム・ピラニヤの気持ちの揺らぎを表現する上で邪魔になっていて感情移入がしづらい。
東京タワーのシーンはオリジナルコングへのオマージュと思われるが、常にどちらかの手がタワーを掴んでいるのはいただけない。サルなんだから、足だけで支えて、両手をフリーにして立回りをして欲しかったなあ。