120rpm

ミル、キク、モノ、コト

太郎という名の猫

い遠い過去のことなのに、絶対に忘れたくない大切な想い出。
猫の話。

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写真はこの2枚しか残されていない

仲良しだった。転校の多かった自分は太郎だけが心の支えだった。

転校してきたばかりで友だちのいない休み時間の教室・・・そこに貼ってある地図をじっと眺めている。いぶかしげにのぞき込むクラスメート。

じっと地図だけを見つめる。少しでも下を向いてしまうと、涙がポロポロと出てしまうから。

せっかく友だちになっても転校で“さよなら”しなくちゃならなかった。
もう、“さよなら”ばかりで嫌なんだよ。

慣れない学校に行っても、思うことは、早く太郎に会いたい、それだけだった。

 

後悔することを学んだ。別れの悲しみを学んだ。

猫は死ぬ時に、飼い主から姿を隠すという。

具合の悪くなった太郎、寝込んでしまった太郎。

何とか元気になってほしいと、学校の帰りは、動物病院を探す毎日。子どもの足で行けるところなんて限られているけど、知らない大人に声をかけ、“動物病院を知りませんか?ボクの猫が病気なんです”と聞いてまわる。

遠い昔のこと。今と違って、動物病院なんてそんなになかった。見たこともない病院をあると信じて探していた。

何日かして“桜井動物病院っていうのがあるよ”と知らない大人が教えてくれた。桜井動物病院・・・ネットで確認したら、今も開業していた。評判の良い動物病院のようだ・・・。

まずは、自転車で行って場所を確かめた。
これで太郎は助かる!

 

家に帰ると、太郎がいない。

“太郎は!?”
“よろよろ出て行ったよ”

“どうして引き留めてくれないの!動物病院、探してくるって言ったじゃん!!”

太郎!太郎!と探し回ったけれど、見つからなかった。

 

太郎がいなくなった、いわんや死んでしまったなどと受け入れられるわけもなく、10日以上高熱でうなされ寝込んでしまった。
先生が言う。
“この子は優しい子だから”

 

大人は何もわかっていない。

 

あれから、50年近くが経つ。
今でも、太郎は生きています。ずっと一緒。