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ミル、キク、モノ、コト

永井豪に関する雑記の続き

森章太郎が、『サイボーグ009』で中断した「天使編」の構想を改め描き直した「神々との闘い編」(1972)だったが、こちらも完結することができなかった。

キリスト教文化を題材として大きく飛翔し、人類滅亡までを描いた『デビルマン』に師匠の石森章太郎は衝撃を受けて、『天使編』『神々との闘い編』を完結できなかったのではと思ってしまう。
デビルマン』自体が石森章太郎の『仮面ライダー』を究極に突き詰めた姿だったのだが・・・恩返しになっていたのかな?

同時期に描かれた『マジンガーZ』では古代ギリシア文明(ミケーネ文明)を題材にしている。テレビアニメにバトンを渡して未完なのが歯がゆいが、その造形は後々のロボットものの礎を成すもので、ロボットに乗って操るところが燃える。『鉄人28号』にしろ『ジャイアントロボ』にしろ、外から操るのが常だったのだから。

マジンガーZ』『バイオレンスジャック』『キューティーハニー』・・・どちらも終わったような終わっていないような未完の出来。とんでもなくカッコよく衝撃的で素敵なのだが、未完成感が漂う。きっと完結することがないところも魅力なのだろう。

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バイオレンスジャックOVAアニメ・・・単発もので完結性はほとんどない

デビルマン』のラストは早急な唐突感は否めないが、人類滅亡の果て、勝者なき闘いの末に訪れる悲しさ、惨さ、儚さなどを描き切っていて、これをアニメ化することは難しいのかもしれない。

テレビアニメ版『デビルマン』は、ヒーローらしい必殺技と、敵のデーモン族との戦いをシンプルに描いていて、漫画のようなカタストロフィには突き進まない子供向けアニメだった。『マジンガーZ』同様、アニメの企画と連載漫画が同時進行したが、『デビルマン』はどちらも最終回まで走り抜けた感じだ。

漫画版『デビルマン』の衝撃は、人類の存続に意味を問うたことだと思う。後々『新世紀エヴァンゲリオン』に繋がる“人という存在”を説いた最初の漫画かもしれない。

そう思うと、『バイオレンスジャック』で描かれた荒廃した世界は『北斗の拳』や『マッドマックス』シリーズの礎となっているのかもしれない。人の存在意義を常に問い続ける穏やかな表情の永井豪先生は天才なのだとひしひしと思う。

漫画版『デビルマン』の映像化は、ファンの期待値の異常な高さもあって満足するものが少ない。

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OVA版は出来が良い。
デビルマン 誕生編』(1987)、『デビルマン 妖鳥死麗濡編』(1990)、音響劇『デビルマン・アーマゲドン編』(1998)を収録。アニメ版としては未完成なものでエンディングまでの音声特典が含まれる。音響劇の完成度は高いが、ここまで作ったのなら最後までアニメ化して欲しかったというのは正直な気持ちだった。

そこを満足させてくれたのが湯浅版だったのだ。

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devilman-crybaby.com

湯浅政明監督の描いた『DEVILMAN crybaby』(2018)は、湯浅監督らしい作画・演出の新しいデビルマンで、しっかりとエンディングまで描いて完結していることに大いに評価できる。今まで完結したものがなかったのだから。

今はこれで良かった。次回アニメ版は・・・庵野監督『シン・デビルマン』が観たいなあ。

追伸:UPして気がついた・・・ついにブログの更新が途絶えてしまった。ちょっと気持ちが折れたようなホッとしたような変な気分だ。ペースを落としても良いかもね。

 

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