プログレ話(1) - ピンク・フロイド -
邦題がとにかくダサい。
なんだこれ?
『永遠/TOWA』(2014年)(原題:The Endless River)
『原子心母』はAtom Heart Motherの直訳にしても洒落てる。
『狂気』・・・良し悪しに関わらず、マンモス的な世界的名盤だから、アルバムジャケットとともに“狂気”という文字はこのアルバムを示すアイコンになっている。
だたし、この言葉に引っ張られたのか、なんともセンスがないのが『鬱』『対/TSUI』『永遠/TOWA』だと思う。
買う気にならなかったよ。
ピンク・フロイドというブランドは、ぎりぎり『ザ・ウォール』(1979年)までだ。『ファイナル・カット』(1983年)はロジャー・ウォーターズのソロだろ。
『鬱』(1987年)以降は、デヴィッド・ギルモア色が濃厚だが、ピンク・フロイドを演じきっている。
ロックバンドにはいくつかのタイプがある。
メンバーの個性がバランスよく生かされて、誰かひとりでも欠けたら成立しないタイプ、突出したひとりの個性を生かすためにバンドが存在するタイプなどなど。
ピンク・フロイドは初期にシド・バレットというカリスマを失ったことでピンク・フロイドを演じてきた。
芝居がかったバンドなんだと思う。
『永遠/TOWA』はラストアルバムだろう。
白玉名人のリック・ライトを失ったバンドは再開したとしても、それはピンク・フロイドではない。
クリス・スクワイアのいないイエスと同じ。
『永遠/TOWA』はインストアルバムで詞によるコンセプトの誘導はない。
そこにあるのは、音としてのピンク・フロイドあるあるのオンパレードだ。
音使いや楽器編成など、次はこうなると分かるような作り。
それが不快かというとそんなことはない。だってそれを演奏しているのは間違いなくピンク・フロイドのメンバーなのだがら。
もう一度、『狂気』を演奏してほしい、『アニマルズ』の空飛ぶ豚が見たいと思ったって無理な話だ。それでも、“これぞピンク・フロイド”を聴ける安堵感を求めるファン心理には突き刺さる。
かつて袂を分かったロジャー・ウォーターズは言った。「フロイドの真似事をしただけのニセモノ」だと。
彼は誤っている点はただ一つ。ニセモノではなくホンモノだったことだ。