120rpm

ミル、キク、モノ、コト

オン・ザ・ロード - ロードムービーの傑作 -

イク映画は、父親がバイク乗りだったから、東映の暴走族もの『爆発!暴走族』(1975)などを観るために劇場に連れていかれた。
とんでもない親父である。  

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1982年は、『汚れた英雄』もあって、邦画のバイク映画が記憶に残っている(親父とは観に行かなかったがw)。

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オン・ザ・ロード(1982)

白バイ警官の富島哲郎は、飲酒運転車の取り締まり中にスクーターをひっかける事故を起こしてしまう。富島はスクーターに乗っていたファッションモデルの比嘉礼子に謝罪に行きたいと上司に申し出るが、上司の高森は「軽傷だし、謝罪に行かれると警察の責任を認めたことになる」としてそれを押しとどめる。数ヵ月後、富島は、比嘉礼子が大怪我であり歩行障害が残ったためファッションモデルを断念せざるを得なくなっていたことを知る。比嘉礼子は、富島を激しくなじった。

改めて富島が比嘉礼子のアパートに謝罪に訪れると、比嘉礼子は東京から故郷の沖縄に戻ることを決め、姉・比嘉さち子が運転する赤いスポーツカーで陸路鹿児島まで向かう旅に出た直後だった。富島は、白バイに乗ったまま、謝罪のためにその赤いスポーツカーを追跡する。

勤務を離脱した白バイがあることが問題となり、各地で警察をあげての大追跡劇がはじまる。wikipedia

監督は和泉聖治。彼の作品では、この『オン・ザ・ロード』と『沙耶のいる透視図』(1986)がお気に入り。認知度の高い作品としては、『相棒』シリーズがある。

朴訥とした渡辺裕之の芝居が癖になる。『サード』(1978)の永島敏行もそうだけど、不器用だけど曲げない生きざまに共感するのかも。

オン・ザ・ロード』は『転校生』と併映で、どちらも風変わりな恋愛映画だったがしっかりと記憶に残っている。

 

事なかれ主義で穏便に済ませたい警察。まさか歩行困難になるほどの大怪我を負わせたとは知らず、その事実を知って沖縄へ帰る礼子を追う哲郎。

礼子はファッションモデルとして売り出そうと躍起になっている最中だったのだろうか。怪我で舞台に立てなくなった彼女に仲間たち(実はライバルが減ったと喜んでいるのか)は形だけの慰めの言葉をかける・・・すぐに自分たちの世界に帰っていく彼女たちに疎外感と孤独、屈辱、挫折・・・諸々の感情が渦巻く礼子。自分をこんな惨めな姿にした男、哲郎を憎み、自分についてくる彼を疎ましく思う。

組織としてのルールを大幅に逸脱し、もう警官ではいられない。それでも礼子に謝りたい一心で彼女を追いかける哲郎。

その一途さをどう思うかは人それぞれなのかも知れない。

礼子の孤独。
申し訳ないという気持ちがほとんどだとしてもそれほどまでに自分のことを想ってくれる人が今までにいたのだろうか・・・哲郎との距離が短くなっていく後半の彼女の心情が切ない。

ラストシーンで、哲郎の朴訥で不器用な想いと礼子の孤独が交錯し溶けていく。
きっと、この先、ふたりは結ばれるはず。ハッピーエンドってことで良いんだと思う。

 

皆にぜひ観て欲しい傑作なのに、観る方法がないとはどういうわけだ?
数年前に『東映チャンネル』でやったきりだ。ディスクとして発売するか、ネット配信して欲しい。