120rpm

ミル、キク、モノ、コト

ゴジラ-1.0

予告を見る限り、「・・・ゴジラ-1.0」とタイトルを言う女性の声が萎えるんだよなあと失礼なことを思っていた。
加えて、現実に今、裕福じゃないしこの先の不安ばかりなのに、戦後の焼け野原に更に追い打ちをかける災禍=ゴジラという図式が重すぎて、劇場に足を運ぶ気持ちが萎えていた。

特撮映画は、怪獣がメインではない。
ゴジラが出てきて大暴れはそんなに楽しいものではない。
怪獣が存在するというシチュエーションを架空の絵空事としてではなく、現実的なリアリティをもって描かれているか、役者の力量だけではなく作家の力量が問われるドラマだと思う。

前作『シン・ゴジラ』は、この架空の出来事が現実に侵食していく様が見事で興奮した。
それを超えないまでの満足の特撮映画になっているのか?

山崎貴監督は、特撮とは言わずVFXという言葉を使うのは、白組だからなんだろう。

 

 

かなり情報が流れているから、ネタバレありで書いていこう。

 

過去作へのオマージュや挑戦がちりばめられていて、感涙に堪えない。
言葉のあやではなく、本当に大泣きしてしまい、涙で良く見えないシーンもあったと思う。

シン・ゴジラとの直接対決(?)を避ける形で、時代を終戦直後に持っていったのは、破壊シーンでは絵になっていて大正解。
ポリティカルな場面を排除し、市井の一般人によるゴジラとの闘いも、ドラマと闘いが乖離することなくシームレスに進むから熱い。
東宝自衛隊的な秘密兵器なしに対決するのも新鮮だった。

 

秘密兵器はないけれど、終戦時に残存していた戦艦を連合軍から譲り受けて・・・というところがマニアにはたまらない。特に重巡高雄のゼロ距離砲弾の迫力は良い絵だった。

最終兵器として登場したのが、局地戦闘機震電
登場シーンでは、うおーっと声が出て前のめりになってしまった。

最近、掩体壕保存に関してのクラウドファンディングが話題になっていた。

readyfor.jp

この大刀洗平和祈念館には、震電の実物大模型がある。
東京の映像制作会社から買い取り7月から公開が開始しているのだが・・・まあ、その経緯を見る限り、これってゴジラ制作用に作ったやつということでOKですよね?

readyfor.jp

映画で震電が登場した瞬間に、こいつだ!と思った。
だから何だというのではないけれど、マーカライトファープやメーサー殺獣光線車、スーパーXに勝るとも劣らない秘密兵器感があって勝手に盛り上がってしまった。

 

怪獣に蹂躙される人々をどこまで描くかは悩ましいところ。
ただ破壊を続ける怪獣を描いても、人がいなければ恐怖は伝わってこない。
そこに自分がいる臨場感をどう描くか。
踏みつぶされる絵をどこまで許容するか。
言い方は悪いが、思いっきりよく振り切ったのは『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』。
渋谷を破壊するガメラは本当にヤバい。

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒

で、そのガメラをぶっちぎったのが今回のゴジラ
体験型ゴジラ映画というべき没入感の高さは最恐だ。

 

音楽も唸ってしまった。
シン・ゴジラ』では旧作ゴジラの曲をモノラルで用いることで効果的に使われていた。
今作ではこれでもかというほどにゴージャスなフルオーケストラバージョンだ。
絵の迫力をより引き立たせるにはこれだったのだろう。
それから、その使い方が泣かせる。
ゴジラのテーマ曲として有名なドシラ ドシラ ドシラソラシ ドシラ♪は、実際にはゴジラに対抗する人間側に使われていた曲だった。
今回はそれをしっかり踏襲して、人間側で使われていた(それもかなり悲壮感のある)。

ゴジラ-1.0 (Original Soundtrack)

 

子役は全てをもっていく。
主人公・敷島とひょんなことから共同生活を営む典子とその連れ子・明子。
この明子は空襲時に託された子どもで血のつながりはないが、典子を母、敷島を父と慕う。
その芝居の健気なことといったら・・・思い出すだけで泣いてしまうよ。

朝ドラの子役たちもすばらしかったのだけど、浜辺美波との何気ない掛け合いが自然過ぎて・・・彼女から何か子供たちが慕いたくなるオーラが出ているのだろうか?
とにかく、子供絡みの描写は反則技だ。

 

日本のVFXを馬鹿にしてみてきたというか、まあ仕方ないよねと瑕疵を諦め気分で受け入れていたけれど、ここまでやってくれたなら十分すぎるほどだ。
凄いなあと素直に思う。

イマジネーションがあるならば、自由に絵作りが出来るレベルになったことがうれしい。
子供だましに、画面をくるくる回したりする必要はない。
その点、山崎監督は失敗も含めて経験値が豊富だったから、落ち着いた迫力のある絵が描けている。これって凄いことだと思う。

 

ストーリーに関しては、脇道もほとんどなく、ストレートに堂々と進む。
伏線というかネタばらしも分かりやすく、よほど鈍い人でなければ、ですよね!と種明かしに意外性もなく安心できる。これをつまらないと思う人もいるのかもしれないが、娯楽としてのゴジラ映画としてはプラスにしかならないと思う。

 

浜辺美波が全部持っていく映画かと高を括っていたが、最高レベルの怪獣映画をみせてもらえた。

 

ありがとう。