120rpm

ミル、キク、モノ、コト

マルタ・アルゲリッチ - 情念のピアニスト -

く迷惑な話だ。そんなつもりで弾いちゃいないとは思う。
それでも彼女のピアノを聴くと心拍数が確実に上がることは間違いない。

熱い情念を感じてしまうのだ。

アゴーギクやディナーミクに癖があって、自分が若い頃はあまり受け入れられなかった。 どこか純なものへの憧れがあった。

ホロビッツは別格、グールドは別世界。

さて、その他のピアニストはというと・・・グルダベートーヴェンは基準点だと思った。 アシュケナージはその甘ったるさが鼻につき論外。ショパンなら、ルービンシュタインとも思うけれど、熱心には聴かなかった。

殊の外入れ込んだのはポリーニだ。20数年前、来日時に偶然日比谷で見かけたことがあって、“マエストロ!”って声をかけたら、にっこりと笑い返してくれた(何か言ったようだが聞き取れなかった)。カッコ良かったなあ・・・。
彼の一音たりとも逃さない曖昧さを排除した完全無比な演奏に聴き馴染んでしまうと、他のピアニストで同じ曲を聴くと一枚も二枚もオブラートに包んでしまったようで納得できなかった。ポリーニさえ聴ければそれで良いとすら思っていた。

アルゲリッチ
人生は表もあれば裏もある。良いこと悪いこといっぱいあるし、隠したいことだって一つや二つあるでしょ?

情念と言いたくなる絡みつくような熱情は、酸いも甘いも噛み分けるじゃないが、人生の機微を感じてしまう。純なものだけじゃなく雑味も全部ひっくるめて、それが人生。

ピアノ演奏に人生もなにもないのだけれど、アルゲリッチの抑揚のある深い演奏を聴くと、そんな人の生きざまのような混とんを感じてしまうのです。

これはチャイコフスキーじゃないという意見すら出てもおかしくないほど、規格外のチャイコフスキーがこれ。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、他

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、他

カップリングのバレエ組曲くるみ割り人形》作品71aが艶っぽくて最高に美しい。
こういった編曲ものは一段下に見てしまうけれども、この作品はチャイコフスキー本人によるものなので、その音の慎重な割り当てが素晴らしく、ピアノのために書かれた曲なのではと思えるほど。

アルゲリッチならこの1枚。

 

来年3月に来日予定・・・チケット・・・うーん、悩む・・・一目見たい。