サンキュー
音楽関係の仕事をしていた時に、部下に吉田がいた。
この吉田という女性は、手際がどうにも悪く、よく叱られていた。
自分も彼女を叱ることがあったが、そんな時決まって、“ありがとうございます!”と言うのだ。
すいませんとかごめんなさい、今後気をつけますなどと言うのが普通だが、それを飛び越して“ありがとうございます!”と言う。
聞いてみると、“私のために貴重な時間を割いて指導してもらってありがたい”のだと。
それからは、彼女をサンキュー吉田と勝手に呼称して、贔屓にして使ってみた。
だが、出来の方は今一だったかそれほど使える感じにはならなかった。
しばらくして、辞めてしまった。
今でもありがとうの場面ではサンキュー吉田を思い出す。
優しいお母さんのイメージで想像してしまうが、結婚とか子供とかはどうでも良くって、穏やかに過ごしていて欲しいなと思うばかりだ。
ちょっと早めに買い物に出た。
少しだけ暑さも和らいだから、おでんにしようと思った。
おでんでここは譲れないという具材は、餅巾着だ。自分で作るとかはしないので出来合いのものを買う・・・と思ったら、なんでその棚だけすっからかんなのよ!
餅巾着がないのではおでんの意味がない。
気持ちを切り替えて、もうお弁当で良いや。
崎陽軒のシウマイ弁当にしようと行ってみたら、【入荷待ち】の札が掲げられている。
ちょっと早めというところが良くなかったようだ。
全く何しに出てきたんだか・・・あっついなあ・・・少しも暑さ和らいでないよ。
サンキューでもなんでもないお話。