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エクソシスト ビギニング - ふたつのビギニング -

カルト映画の話をすると、アクセス数が低下するw

嫌いな人は駄目なんだろうね・・・自分の洋画だけでなく音楽体験、大げさに言えば人生の指針さえ示してくれたのが『エクソシスト』鑑賞だった。

エクソシスト』関連の話を複数回しようかと思っている。

大ヒットした本編から派生して続編が作られた。
エクソシストシリーズ第四弾『エクソシスト ビギニング』だ。

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エクソシスト ビギニング(2004)

第二次世界大戦末期、ランケスター・メリン神父(ステラン・スカルスゲールド)は神への信仰心を見失っていた。生まれ故郷のオランダで体験した、ナチスによる教区の人々へのおぞましい残虐行為を阻止できなかったことに、自分を許せずにいるのだった。恐怖の記憶から逃れるべく、メリンは故郷オランダを捨てて世界中をさまよう。流れ着いたカイロで、メリンは古美術収集家と名乗る男と出会い、ある頼みごとをされる。ケニヤのトゥルカナ地方で行われている、イギリスの考古学発掘隊に加わってくれというのだ。イギリス政府が資金を出したケニヤの僻地の発掘作業で、完成直後に埋められたかのように見えるビザンティン帝国時代の教会が発見されたのだ。その教会は、予想をはるかに超えて当時のままの姿で保たれていた。メリンに話を持ちかけたその男は、教会内部に隠された古代の聖宝である小さな彫像を発掘部隊よりも先に見つけ出し、密かに自分に渡して欲しいと要求する。メリンはその話に興味を持ち、依頼を引き受ける。発掘現場に到着したメリンは、理想に燃える若き神父フランシス(ジェームズ・ダーシー)と、ドクターであるサラ・ノヴァック(イザベラ・スコルプコ)に出会う。また、以前村に滞在していた神父がかわいがっていた、アフリカ人の少年ジョセフ(レミー・スウィーニー)と、心を通い合わせるメリン。しかしその頃からジョセフの周囲で猟奇的な殺人事件が発生し、その後も次々と殺人、そして不可解な自殺が相次ぐ。そして、じょじょにジョセフ自身にも異常が現れるようになり、突然激しい痙攣から意識を失い、戯言を口走るようになるジョセフ。そんな状況に恐怖を抱いた村人たちは、ジョセフに悪魔が乗り移ったと考え、神への生贄として彼の命を奪おうとする。その瞬間、ジョセフの目に妖しい光が宿るのだった。実在するはずのない教会、狂気に駆られていく人々、多発する猟奇殺人と変死体。やがて、悪魔の存在を確信したメリンは、再び聖職衣に身を包み、悪魔と対決することを決意する。Movie Walker

嫌な予感しかしない。『エクソシスト』以降続編が作られたが、第一作ほどに注目されかつ出来映えの冴えた映画はない。大体そういうものだ。

スターウォーズのアナキンが何故、暗黒面に落ちたか・・・『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』では子役が可愛かったり、その後もヘイデン・クリステンセンだから持ったようなものだ(見た目の話)

続きもので上手くいったなあと思えるのは『ゴッドファーザー』くらいか。

本編をエピソード1とするなら、『エクソシスト ビギニング』はエピソード0だ。
本編の老神父・メリンの前日譚(こんな言葉があるのなら)で、いかに神を捨て再び神のもとに帰ったかの物語。本編でわずかに語られたものの謎多きメリン神父の秘密を語る物語だ。

ホラー映画にありがちの脅かしの場面がやや多めで心臓に悪い。

この映画は『エクソシスト』前日譚だから、観客が『エクソシスト』を知らない前提で描いている。そのため、悪魔祓いに関する説明は丁寧だと思う。正統派と言って良い。

エクソシスト』で憑依したと思われる悪魔パズズとの最初の闘いが描かれる。

この映画の凄いところは、オチは『エクソシスト』を待てとしたところ。
この映画を観てから、『エクソシスト』を観ると諸々の謎が補完されてさらに楽しめるという趣向だ。

このアフリカの地に災いをもたらしたのは誰か?
現地人の土着神(忌まわしいものだとしてもだ)の上に、キリスト教会を建てたのは何故か?
悪魔が去った後に、憑依されていた者が死んでしまうのは何故か?

選択を迫られた時の最善の選択はあるのか?
神への信仰を失った者への報いなのか?
神は勝ったのか?
悪魔は負けていないのではないか?

映画は、支配する側の独善的な行いに対する報いを示していて、心の闇は深い。西洋的宗教観が正義ではなく、土俗的宗教観もあり得る、受け入れることの寛容性。

キリスト教そのもののを偽善だと切り捨てるものだとしても、本編『エクソシスト』の序章として素晴らしい出来だと思う。撮り直しを依頼されたレニー・ハーリン監督は、限られた予算と時間の中でよく撮れた作品なのではないだろうか。

Dominion: Prequel to the Exorcist (2005)
撮り直す前のポール・シュレーダー版も観ることが出来る。同じ基本プロットなので見比べると興味深い。
メリンがいかに神父に復帰するかを理解するには、過去から未来へ流れる素直な時間軸は分かりやすい。落ち着いたカメラワークは、アクション畑のレニー・ハーリンとは違うが、あくまで娯楽映画なのだという観点から見れば、どうにも押しが弱い。完成させたこと自体が、撮影中止・更迭を言い渡されたポール・シュレーダーの意地なのか。にしても、金がないのは悲しいことだ。悪魔祓いの場面のチープさとイマジネーションの稚拙さは悲しいばかり。しっとりした進み方に、『エクソシスト』との親和性を感じることもできるが、ここは『エクソシスト ビギニング』に軍配が上がる。

そういえば、ポール・シュレーダー版ではヒロインは死なない。
というか、死者の数は圧倒的に少ない・・・『エクソシスト ビギニング』はメリンと少年ジョセフ以外、全滅だからなあ・・・ひどい話だよ。

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EXORCIST: COMPLETE ANTHOLOGY
このBOXなら両作品が楽しめる。輸入盤だが、日本語字幕および監督コメンタリー付きだ。