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宇宙戦争 - アンチSFパニック映画 -

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宇宙戦争(2005)

H・G・ウェルズによる同名SF小説宇宙戦争』を原作としたSF映画である。 スティーヴン・スピルバーグ監督作品。トム・クルーズは出演のほか、製作にも参加している。製作費は1億3200万ドル。興行収入は2億3427万ドル。2005年6月29日、日米同時公開。wiki

イデアの勝利ですね。

H.G.ウェルズの原作は、SFファンなら知らなきゃモグリだろというほどの古典で、ストーリーを説明する必要すらありません。
乱暴に言えば、地球を侵略にやって来た火星人が、最後の詰めで、地球の細菌にやられて死にました・・・というお話。

100年以上前の作品(1898年発表)を現代に置き換えて、再映画化ですから、何星人だかわからない連中は出ますが、火星人は出ません。

何がアンチかといえば、お約束が通用するのは、主人公たちが死なないことのみ。
あるでしょ・・・宇宙人襲来で、その国(街)のランドマーク的建造物が破壊されるシーン、対策本部みたいなところで退治する方法を考えているお偉いさんのシーン、ひょんなことから相手の弱点を見つけたアメリカ軍総攻撃 >>> 撃退!、命の危険を冒してまで献身的に人々を救う主人公・・・などなど。

この映画にはないんです。

主人公は、離婚暦のある港湾労働者で元妻から子供2人を預かるという描写で、ヒーローではないことを知らせます(どちらかといえば、人生の落伍者か?・・・言い過ぎ)。それでも、隣近所の人々との会話から、付合いの悪い変わり者ではない普通の市民なんだなと推測されるのですが・・・。
ひょんなことから人類を救うヒーローになることもなく、ひたすら逃げ惑う市井の一人でしかないわけです。

世界最高峰の特撮シーン(今観ても遜色ない)満載で度肝を抜かれますが、それはありふれた日常の延長線での非日常として描かれ、よく見知った都市破壊に対するカタルシスとは異質のものです。

ハンディカメラで撮っているような微妙に揺れる画面には、とてつもない破壊と殺戮を繰り返す“トライポッド(異星人の殺戮マシン)”が映し出される。
人が瞬殺され灰と化すシーンの連続が繰り返され、主人公たち同様、身を隠すしか術がないのだという絶望的な恐怖感が伝わってきます。トライポッドの行動に規則性がないのが、また怖いんです。

人々のエゴもガリガリ描いていきます。
主人公も例外ではなく、子供を守るためには殺人もいといません。

“異星人襲来によるパニックを一市民の目を通して描く”とは、スピルバーグ監督に技ありの1本ですね。

音楽は、ジョン・ウィリアムズですが、非常に抑制の効いた音楽で、芝居を邪魔しません。
テーマというものも記憶に残らないのですが(というか無いに等しい)、それでいて、映像効果を高める第一級の“映画音楽”でした。

当たり前に描いた恐怖感はただ事ではありません。
気の弱い方、お子様は要注意です。

映画の中では朝日放送の中継シーンがあったり、「大阪では(トライポッドを)何体か倒したらしい」というセリフがあり、これは『ゴジラ』をはじめ怪獣映画を多数製作している日本に、監督のスピルバーグが敬意を表したものである。wiki

レディ・プレイヤー1』ほど露骨じゃなくて良いです、ほんのちょっと日本のことを気にかけてもらえるだけですごく嬉しかったりする。