120rpm

ミル、キク、モノ、コト

未来世紀ブラジル - 幸せな廃人の話 -

リー・ギリアムの三部作の2作目。テリー・ギリアム - Wikipedia

バンデットQ』(1981)少年

未来世紀ブラジル』(1985)青年

『バロン』(1989)壮年~老年

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未来世紀ブラジル(1985)

クリスマスの夜。ショー・ウィンドウがテロのために爆発。こわれなかったTVでは情報省次官のヘルプマン(ピーター・ボーガン)が、情報管理の重要性を力説しているところを写し出している。情報省の官吏がオフィスに現われた虫を追いかけ、はたき落された虫がタイプライターの上に落下。おかげで、タイプ中の容疑者の名前がタトル(Tuttle)からバトル(Buttle)に変った。平凡なバトル一家に情報省の連中が闖入し、有無を言わせずにバトル氏を連れ去った。上の階に住む女トラック運転手ジル(キム・グライスト)は抗議するが、相手にされない。情報省記録局ではカーツマン局長(イアン・ホルム)が、局員のサム(ジョナサン・プライス)にバトルの件について問い正そうとして、彼の欠勤に気づき怒る。その頃、サムは銀色の羽根をつけたヒーローに扮し、美女と出会う夢をみていた。局長の電話で起こされて情報局へ。そこで、抗議に来ていたジルをみかける。彼女は夢の女性そっくりだった。サムの母アイダ(キャサリン・ヘルモンド)は整形外科医のオフィスで治療を受けつつ、息子の出世欲のなさをなげき、裏から手を廻して昇進を画策したことを認め、友人の娘シャーリーと彼を一緒にさせようとする。サムのアパートの通気口が故障し、セントラル・サーヴィスに電話するが、夜間の修理はしないという。と、そこへ武装した男が来て、タトル(ロバート・デ・ニーロ)と名乗り、非合法の修理屋だと自己紹介して修理した。公式にはセントラル・サーヴィスしか工事をしてはいけないのだが、書類仕事が嫌でもぐりの修理工をしているのだそうだ。サムはバトル家に検束費用の超過分払いもどし小切手を届けに行き、ジルを見つけた。アパートにもどると、セントラル・サーヴィスの係員が勝手に入り込み、タトルにやらせたなと怒る。その夜、彼はまたヒーローになってサムライ・モンスターと戦う夢をみた。ジルのことを知るために、情報省検束局への昇進を承知した。そこでは旧友のジャック(マイケル・ペリン)が容疑者を拷問し、白衣を血だらけにしていた。ジャックはバトルの誤認逮捕を隠蔽するためにジルを拘留しなくてはという。サムは僕にまかせてくれといい、受け付けにまた抗議に来ていたジルを連れ出す。彼女は彼を信用しない。デパートでの爆弾テロ騒ぎにまきこまれてしまい、ジルと別れ別れに。アパートは部屋全体が巨大な冷凍庫と化し、セントラル・サーヴィスの係員がいじくっており、サムは強制退去されたという。タトルがそっと現われメカをいじくり、中の係員に汚穢をひっかける。ジルと再会して楽しい一時を過す。翌朝、彼はつかまった。拷問室でジャックによる拷問が始まろうとした。そこへタトルが仲間と現われ、銃撃戦の末に救出。逃避行の末ジルの運転するトラックで二人はのどかな田園へ……が、一転拷問室に戻る。逃避行は拷問に耐えかねたサムの空想だったのだ。廃人となったサムをみつめるヘルプマンとジャック。二人が去った後拷問室にはサムが口ずさむ「ブラジル」のメロディが響き渡るのだった。映画.com

「ぶざまなほど統制された(awkwardly ordered)人間社会の狂気と、手段を選ばずそこから逃げ出したいという欲求」というテーマを一番ダイレクトかつシニカルに描いたのがこの『未来世紀ブラジル』だ。 

1984」的滑稽なまでの管理社会への反乱・・・などはどうでも良い。

垂れ流されるリビドー全開のビジュアルを大いに楽しむべき映画。ここに描かれている世界なんて、もう目新しいものでもなんでもなく、今の社会そのもの。社会が助けてくれるとか、会社が何とかしてくれるとか、本気で思っている輩がいるのかと思うと反吐が出る。

自力でずるしてでもなんとかしようとする主人公には、迷惑で疎ましさが先に立ってしまいシンパシーの欠片も感じないが、最後にぶっ壊れて気持ちよさそうな夢を見ているから、これはこれでハッピーエンドなんだろう。

知らぬ間に茹でガエルになりそうな実生活の中でぼんやりと“いいな”と思う。