120rpm

ミル、キク、モノ、コト

五代目 古今亭志ん生

河ドラマ『いだてん』の語り部古今亭志ん生ビートたけし)がクローズアップされていて、良し悪しをひっくるめて話題になっていることがうれしい。

破天荒な若かりし頃の志ん生森山未来が演じているが、どう変化するとたけし顔になるのか・・・あのイケメンがああなってしまうのだから(輪郭の話だよ)・・・生命の神秘だなあと思っている。

映像は「風呂敷」(昭和30年5月4日放送「放送演芸会」)しか市販されていない。志ん生を楽しむには音源しかないのだ。

www.asahi-net.or.jp

昭和の名人たちの落語音源データをまとめた素晴らしいサイト。

出囃子は一丁入り。

火焔太鼓
志ん生といえば火焔太鼓。元々ある小噺を盛るだけ盛って志ん生が作り上げた新作落語と言って良いと思う。その面白さは聴いてもらうしかない。文字で説明しても面白さが伝わらない。

「世に二つという名器でございます」
ボロの太鼓が、実は火焔太鼓という名品だと説明を受ける際の表現。
不思議な言い回しで、“世に二つとない”の言い間違い?、いやいや、火焔太鼓というものは対だったので“世に二つという”で良いのだ、などなど意見は様々だ。
この言い回しは、息子の代(古今亭志ん朝など)にもそのまま受け継がれているから、これで良いのだと思う。

志ん生曰く「落語は教科書ではない」なのだから。

録音は11本残されているが、CD化されているものは9本か。その内、8本は耳にしている。

1956年9月3日録音が好き。
女性や子どもの屈託ない笑い声が噺の楽しさを後押ししている。
この一体感は録音でも十分味わえる。同じ音源でも音質の差があって、お薦めは『古今亭志ん生 名演大全集』の1枚(1956年9月3日録音が入っている)。 

古今亭志ん生 名演大全集 1 火焔太鼓/黄金餅/後生うなぎ/どどいつ、小唄

古今亭志ん生 名演大全集 1 火焔太鼓/黄金餅/後生うなぎ/どどいつ、小唄

 

黄金餅
道中付け(街道の道筋や地名をテンポよく一気に言いたてるやり方)は、志ん生の芸風からはズレたものだけれども、つっかえそうでつっかえない、手を差し伸べたくなる様は、客を引き付ける味になっている。落語の不思議(勧善懲悪の倫理観などない)を教えてもらった破壊力満点の志ん生黄金餅」は必聴。

録音は3本と意外なほど少ない。

志ん生を聴くなら、
NHK落語名人選 - 五代目 古今亭 志ん生 - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
NHK落語名人選(旧)から選ぶと失敗がない。
106枚の内14枚が志ん生だ。録音の質も悪くない。
志ん生の録音は、各レコード会社、各企画で使いまわされているものが多すぎて、混乱(というか買ってガッカリ・・・持ってるよ、これ)してしまうこと必至。レンタルでまずは聴いてみると良いかも知れない。

気に入ってハマったなら、こちらがお薦め。 

50枚セットで堪能しましょうw

志ん生は、1961年暮れに脳出血で倒れ、復帰後は口跡が悪くなってしまう。
1964年に東京オリンピックが開催される。
半身不随の志ん生を『いだてん』ではどう描くのだろう・・・。
今回の大河では、狂言回しの志ん生が気になって仕方がない。

六代目 三遊亭圓生

ん生も文楽も記憶にない。
昭和の名人と呼ばれる落語家の中で、自分の記憶にあるのは、六代目三遊亭圓生だ。

子供の頃は、日曜の午後、テレビで寄席番組が結構あった。
日曜も午後になると翌日の学校のことが気になり始めて、子どもながらにブルーな気分になって来る。
そんなテンションが下がっている中で、ぼんやり見ていたのが、圓生だった。

わざとらしく笑いを取る事はせず、時にゾッとさせたりホロリとさせたり。
落語に人情噺や怪談噺があるとは知らなかったから、その意外性が妙に記憶に残っている。

出囃子は正札附。

数多くある出囃子の中でも整っていて美しい。まさに圓生

史上最多の演目を持つ圓生は、録音も映像も多く残っていてありがたい。

実況録音が良いかスタジオ録音が良いかは、意見が分かれる。
例えば、志ん生は、客との距離感や間、志ん生独特のフラから起きる観客の笑い声など、実況録音ならではの臨場感が痺れるほど楽しい。
圓生の実況録音は、彼の美学というか潔癖さというかどこか芸術至上主義的な厳しさや凄みが薄れてしまって、面白みが削がれる。

圓生百席

圓生百席』は、圓生の100以上もの演目をすべてLPレコード化するという企画(ソニーレコード、プロデューサー京須偕充、ジャケット撮影篠山紀信)。 『圓生百席』(当初『三遊亭圓生人情噺集成』として刊行されたものを含む)は延べ収録時間110時間をに超え、のちにCD化されたものではCD126枚(他にセットには特典盤2枚付)に及ぶという、日本の演芸界でも他に類を見ない大作。すべて観客のいないスタジオで録音されており、異例な事だが演者自身が編集作業に立ち会って言い間違いや間の狂いなどを徹底して排除し、修復不能な場合は最初から収録し直す方法で製作された。「あがり」と「うけ」のお囃子も演目ごとにすべて変えてあり、6代目三遊亭圓生自身が選曲している。 今でこそ珍しくないことだが、前例の乏しい当時、音源記録へ自身の落語を残そうと取り組んだ功績は大きい。wikipedia

これにとどめだと思う。スタジオ録音のため、圓生も納得の録音なのではないだろうか。CD化に際していくつか問題のある表現がカットされている・・・時代だと思うしかないか。 

圓生の録音室 (ちくま文庫)

圓生の録音室 (ちくま文庫)

 

圓生百席』の録音風景は、このエッセイに詳しい。当時の空気すら感じられる臨場感のある文章は必読だ。

演目の多さ、録音・録画への先見性から、圓生クラシック音楽界のカラヤンに似ている。
現在の落語家、落語ファンに残した宝。本当に完成してよかったと思う。学ぶ素材を多く残したという点で、現在でも影響力の強い落語家なのだと思う。

この『圓生百席』の中で、個人的に好きな演目は、

紺屋高尾
圓生の面白いところは、意外とがっちりと演じ切るというよりは、途中途中で時事ネタが入るところだ。「10両持ってるなんて、お前か田中角栄くらいだ」的な表現にあれ?と思う。録音されて長く残されるものなのに、普遍性に重きを置くでもなく飄々と言ってのけて、それでOKなのだから。

中村仲蔵
今は八代目林家正蔵の仲蔵が絶品だと思うが、圓生の仲蔵がこの演目を知った最初だった。こういう出世噺もあるのかという発見と歌舞伎とのつながりを教えてもらった素敵な演目だ。

佐々木政談
鼻っ垂らしの子どもが目の前にいる。その表現力に圧倒される。小憎らしくも愛らしい子どもに会いたくなったら、この演目を聴く。

鼠穴
談志がどこか照れながら演じているのに比べ、情景の描写力、表現の割愛の仕方など好みは圓生版だ。もしも、この話を知らない方がいたなら、羨ましい限りだ。ぜひ、何の予備知識も入れずに聴いて欲しい。人生でまだ鼠穴を初めて聴く楽しみが残されている人に嫉妬しつつ思う。

唐茄子屋
志ん生は面白おかしくも悲哀を込めて愛らしい徳三郎を演じ、遠く吉原の灯りを眺めて終わる。圓生はその上段だけでなく、しっかり下段まで演じている。
ここでも子どもの表現に心を打たれ涙する。傑作。

言い出したら、全演目書きたくなってしまうので、今日はこのあたりで。。。

名代富士そば、立って食べるか?座って食べるか?

職したての遠い昔、富士そばはありがたい存在だった。
忙しい中、立食で頼んだらすぐ出てきて、さっと食べて“ごちそうさま”とその場を離れる。
立ち食いそば=富士そばだった。

中野のサンモール商店街にも富士そばがある。入ったことがなかったが、気になって入ってみて驚いた。

立ってない。

これではないと思った。
座って食べることで、数多ある既存のそば屋と同じ土俵に乗ってしまった。
安い。確かに安いのだが・・・それでも値段に見合ったものなのかというと不味い。
つゆは濃い目で嫌いじゃないが、麺は伸び気味だし、てんぷら(かき揚げ)は緑のたぬき×厚さ2レベルで、ありがたみの無さが半端ない。

中野駅北口には、落語ファン御用達(ホントか?談笑師匠が堂々とディスったために食べに来ているように思えてならない)の田舎そば かさいがある。

田舎そば かさい (いなかそばかさい) - 中野/そば [食べログ]

不愛想な店主(なのか?午後はいつもいる)、うどんと見紛う程太いそばなのだが、、、ここが世界一美味いと思う。他のそば屋がすべて消えてもここだけは残ってほしいと思うほど大好きだ。

立ち食いという形式がその美味さを倍増している。席に座ってゆっくり食べたら・・・あの感動的なほどの美味さは感じられないはずだ。

立ち食いだった頃の富士そばは、ありがたい存在というだけではなく、確かに美味かった。

立ち食いカツ丼っていうのはないよね?

よし!次回はカツ丼を食べてみよう。そば屋のアイデンティティはどうなの?と思うが結構メニュー上でも押しだったし。

やっぱり、富士そば、美味いね!と言いたいのです。
ああ、青春の富士そばに幸あれ!(アホか)

『なつぞら』第9回は神回だった

画しながらNHK連続テレビ小説なつぞら』を観ている。

4月10日の第9回。
柴田家から家出をして河原で焚き火しているなつ。
父からの手紙を読み返し、それに添えられた父の描いた楽し気な家族の絵に涙が止まらない・・・そこで流れる歌が「青空」でした。

こちらも涙でウルウルしながらも、一緒に歌えてしまった。

はて?
さすがにそんなに年寄りではないし・・・古い映画で観たのかしらん?

今朝、ハッと思い出しました。
5代目 古今亭今輔師匠の十八番「青空お婆さんですよ。
この落語の中にお婆さんが歌うのが「青空」でした。
好きで繰り返し聴いていたものだから、覚えてしまったんですね。


古今亭今輔 (五代目) 青空おばあさん*

なつが家族でお祭りに出掛けたところを夢想していると、泰樹(草刈正雄)ら柴田一家がなつを見つける。そんな柴田一家の姿を見つめ「どうして私には家族がいないの!」と泣き叫ぶなつ。

駄目です、なつの孤独を思うと、こちらも号泣です。

泰樹がなつを抱き締める。
「おまえにはもう、側に家族はおらん。だが、ワシらがおる。一緒におる」

駄目押しです。『アルプスの少女ハイジ』が頭をかすめつつ、大号泣です。

あの花 - 落語物語

ニメももちろん大好きなのだが、実写版も紛うことなき“あの花”だった。
この番組で浜辺美波が気に入って、彼女の出る映画、ドラマはほぼほぼ欠かさず見ていると思う。

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このあの花実写版のBlu-rayamazonで見たらとんでもないことになっていた。

購入価格は4,016円、今の中古売価84,800円・・・理由は出演者にしくじったヤツがいたためだ。被害者がいるので、販売を控えるのはある程度は致し方ないと思う。

こうなると、気に入ったものは現物(円盤)で持っているべきで、誰かのさじ加減で消えてしまうネット配信などは信用できない。加えて、それに乗じて、値を吊り上げる転売屋の心根の卑しさに情けなくもなる。

amazonビデオで購入した中に『落語物語』(2011)がある。

落語家自らメガホンを取った正真正銘の落語映画。監督は昭和の爆笑王・初代林家三平門下の林家しん平。史上初となる(社)落語協会の全面バックアップが実現し、更には東京に残る4軒の寄席(上野鈴本演芸場新宿末廣亭浅草演芸ホール池袋演芸場)の協力により、楽屋も含め全寄席での撮影が行われた。着物、小道具、お囃子に至るまですべてが本物であり、寄席の高座や楽屋風景、芸人同士のやりとりや独特な師弟関係なども忠実に再現、高座着への着替えシーンなど所作の美しさも必見。また、寄席の大看板・柳家権太楼をはじめ、プラチナチケット必須の柳家喬太郎春風亭小朝、若手の筆頭・隅田川馬石など、総勢40名を超える現役人気落語家が総出演。落語と落語家への敬愛と、『男はつらいよ』“寅さん”シリーズを始めとする人情喜劇映画へのリスペクトをこめた監督の眼差しが、落語をより身近なものにしてくれる amazon

 【噺家あるある】は、落語や寄席に馴染みがないと面白くない。楽屋落ちも甚だしい映画なのだが、今をときめく人気落語家たちのちょっと若くて初々しい姿が拝めるし、物語もホロリとホッコリなので気に入って度々再生していた。

ピエール瀧が主演なので、買ったものですらサーバーから消されるのか!?と不安に思っていたが、それは避けられたようだ。

被害者のいない薬物事犯でガタガタ言ってるテレビのコメンテーターはウザいし、何をビビってるのか連帯責任とか自粛とか・・・誰得なの?と意味が分からん。

ピエール瀧逮捕で石野卓球にワイドショーが「謝れ」攻撃! 同調圧力、連帯責任…日本の異常性を突いた卓球のツイートは間違ってない|LITERA/リテラ

そんなことはどうでも良い。
好きな映画、好きな音楽に対して、対価を払った(払いたい)人へは供給を続けてほしい。

そうならないだろうなという諦めから、部屋にはディスクがどんどんと積まれていく今日この頃です。