クラシック音楽へのこだわり
クラシック音楽はこだわりがないと切りがない。
何を言っているのかというと、同じ曲でも多くの演奏家によって録音されているからどれを聴けばよいのか訳が分からない。
そんな時はこうしようと自分で決めたことがある。
音楽に訛りがあるのだとすれば、その訛りが分かるのは同郷の人なんじゃないか。
同郷は狭すぎるので、せめて同国、同言語圏の人。
ドイツ音楽ならドイツ人、フランス音楽ならフランス人、イタリア音楽ならイタリア人。
ベートーヴェンはフルトヴェングラーやカラヤン、ドビュッシーならアンセルメ(スイス人だがフランス語圏)、ヴェルディやプッチーニなら・・・といった具合に。
もう一つ。それほど多くはないけれど、作曲家自身の自作自演はチェック。
お気に入りは、ストラヴィンスキーとラフマニノフの自作自演。ラフマニノフの硬質でメカニカルなタッチはよく耳にする軟派な演奏とは本家は全く違うのだと分かって面白い。
Igor Stravinsky - The Complete Columbia Album Collection
- アーティスト:Igor Stravinsky
- 出版社/メーカー: Sony Classical
- 発売日: 2015/10/09
- メディア: CD
- アーティスト:ラフマニノフ(セルゲイ)
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2009/12/23
- メディア: CD
最近のお気に入りは、エリオット・ガーディナーだ。
今の理屈でいくと、ガーディナーはイギリス人なのでイギリス音楽・・・。大英帝国さんはビートルズなどロックが世界を席巻するまで音楽後進国だったんじゃないかと思う。
パーセル、ヘンデル、ブリテン、ホルスト・・・段々小者になってく気が(失礼)・・・といった具合に不作だ(ヘンデルってドイツから帰化してるし)。
なので、エリオット・ガーディナーという指揮者は自分の中では対象外だったのだ。
最近、ベートーヴェン交響曲全集を聴いて驚いた。
彼によって設立された古楽器オーケストラ【オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティック】による演奏。
こだわるべきなのか避けていたものが、ここでもう一つ。
作曲された時代に関するこだわり。
大河ドラマを見ていて出てくる馬は当時の馬とは全く異なる。当時、サラブレッドはいない。
そういったものに似て、作曲された時に存在しなかった楽器で演奏されているのが現代オーケストラの演奏だ。
楽器も違えば、奏法の異なるし、その楽器群の位置も異なるのだ。もっと言えば、ピッチすら違う。
作曲者の意思を尊重するなら、そこまでこだわって・・・ここでちょっとしたトラウマがある。
アーノンクールやホグウッドあたりでバロックを聴いて、つまらなくて涙が出た記憶が・・・その反動で聴きまくったグールドのピアノの楽しかったことと言ったら(バッハの時代にピアノはない)。
そんな風に何十年も避けていた古楽器オーケストラだったが、ガーディナーは違った。
音色は明らかに現代オーケストラとは違うけれど、埋没していた音が細やかに蘇り、ベートーヴェンの意思がそこに息づいていた(ように感じた)。今まで流して聴いていた箇所にこそ面白みが隠されていて、再発見の喜びでヘビーローテーション状態だ。この軽やかさは癖になる。
食わず嫌いを後悔しつつも、今、新しい楽しみを与えてくれたエリオット・ガーディナーに感謝、感謝。
最初にクラシック音楽はこだわりがないと切りがないと書いたけれど、こだわりだしたら切りがないのかなとも思う。すごい沼が広がっているからね。
- アーティスト:John Eliot Gardiner
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
- 発売日: 2019/10/18
- メディア: CD