120rpm

ミル、キク、モノ、コト

東宝特撮映画の世界 - 1950年代(ゴジラ以外の怪獣映画) -

獣人雪男
1955年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●原作:香山滋
●脚本:村田武雄
●特殊技術:円谷英二
●撮影:飯村正
●音楽:佐藤勝
●美術:北辰雄
●録音:西川善男
●照明:横井総一
●出演:宝田明(飯島高志)/河内桃子(武野道子)/笠原健司(武野信介)/中村伸郎(小泉重喜)/小杉義男(大場)/根岸明美(チカ)

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検隊が雪男捜索にアルプスに向かう。ある夜、道子は不気味な半人半獣に遭遇する。それを追う飯島だったが・・・。雪男で一儲けを企む大場らに遭遇、崖下に突き落とされた飯島は、雪男を守り神とする部落のチカという娘に助けられた。よそ者を快く思わない村人によって崖に吊るされてしまうが、禿鷹の餌食になるところを雪男に助けられる。大場らは、チカの案内で雪男の生捕り成功するが、雪男の子供を殺してしまう。怒った雪男は大場を殺し、さらに探検隊キャンプへ向かい道子をさらってしまう。探検隊一行は噴火口の傍まで雪男を追うが、道子がいるために銃を使えない。この時チカが雪男に近づく。雪男は道子を放り出しチカに向かった瞬間、銃弾が雪男の胸を貫いた。凄じい形相の雪男は、チカを抱いたまま、噴火口に消えていく。

ゴジラの逆襲」の村田武雄の脚本を、「おえんさん」の本多猪四郎が監督、同じく飯村正が撮影する。音楽は「新鞍馬天狗 夕立の武士」の佐藤勝の担当。出演者は「新鞍馬天狗 夕立の武士」の宝田明、「33号車応答なし」の河内桃子、「あすなろ物語」の根岸明美など。


河内桃子のお嬢さま然としたその容姿と身のこなし、根岸明美のワイルドで健気な女心を表現した芝居が見所。
“オラが行く。女のオラだったらできるかも知れん。あんたのためにやってみる。”
根岸明美演ずるチカが、飯島のために道子を助けに雪男に向かっていく時のセリフに涙が出る。

雪男の着ぐるみは、犬や山羊などの毛を縫い合わせて作られ、非常に良くできている。

表現の問題なのかソフト化が難しい作品とのこと。作品全体を見ずに些末的な部分で制限をかけているのだとすれば、何と愚かなことだろう。強くソフト化を希望する。

 

空の大怪獣 ラドン
1956年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●原作:黒沼健
●脚色:村田武雄/木村武
●撮影:芦田勇
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:北辰雄
●録音:宮崎正信
●照明:森茂
●出演:佐原健二(河村繁)/平田昭彦(柏木久一郎)/田島義文(井関)/松尾文人(葉山)/草間璋夫(須田)

国籍不明の1機、福岡方面に向かって飛行中。
高度2万、進路北北西、超音速!

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世界各地で報じられる謎の巨大な飛行物体のニュース。それは原水爆実験の影響で目覚めた翼長270フィート、体重100トンのプテラノドン、怪鳥ラドンの姿であった。九州・阿蘇火口で地底に群れなすヤゴのような怪物メガヌロンを次々とついばんでいたラドンは、やがて本能の赴くまま風を巻いて飛び上がり、福岡市街に降り立った…。


東宝特撮陣が挑んだ初のカラー特撮怪獣映画。まるで自然の猛威のごとく破壊の意志なき破壊を繰り返す太古の翼竜の末裔“ラドン”。飛行能力を持つラドンは、ゴジラとは別の新しい破壊パターンを生み出しています。また精密に作られた福岡市街のセットがリアルさを強調。兵器によって滅ぼされる悲愴なラストが、意志なき怪獣ゆえの悲しい宿命を描き出しています。

発端の奇怪な事件から、巨大な怪獣の予兆、都市の崩壊と、ストーリーもサスペンスとスピード感に富み、第一級の娯楽作品。メガヌロンに恐怖した人々の前に、そのメガヌロンすら単なる餌でしかない巨大な怪鳥が現れる・・・この展開の妙には鳥肌が立つ。

強風によってバラバラと倒壊していく建物は、まさに本物と見まがう迫力。破壊されるビルの中に逃げ惑う人がしっかりといたり、ビルの窓にはカーテンがかかっているなど実に細かい。クライマックスのラドンの最期は、過熱したピアノ線が切れた事による偶然の演出だが、哀れさを誘う名場面。特撮を見ていくと切りがない。ただ、ラストの攻撃場面は長すぎるかな。

飛行機雲を見ると“ラドンだ!”と叫ぶのは大人になっても変わらない。

 

大怪獣バラン
1958年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●原案:黒沼健
●脚本:関沢新一
●撮影:小泉一
●特殊技術:荒木秀三郎/渡辺明有川貞昌
特技監督円谷英二
●音楽:伊福部昭
●美術:清水喜代志
●録音:小沼渡
●出演:野村浩三(魚崎健二:生物研究者)/園田あゆみ(新庄由利子:婦人新聞記者)/松尾文人(堀口元彦:キャメラマン)/伊藤久哉(新庄一郎:生物研究者)/桐野洋雄(河田豊:生物研究者)

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北上川の上流で蝶の実態調査中、調査隊は地図にもない湖を発見するが、そこから現れたバランによって、無惨な最後を遂げる。バランの大都会侵入を阻止するため、現地駐屯部隊が攻撃。照明弾で山頂に誘導するが山火事が発生、バランは飛び去ってしまう。その後も強力火器でバラン撃退を図るが、バランを刺戟するのみ。時限装置付き特殊火薬を投下し、バランが呑み込んだ。大爆発の水柱とともにその巨体は水中に没し去った。

黒沼健の原案を、関沢新一が脚色、本多猪四郎が監督、お馴染み東宝の空想怪獣映画。撮影は「美女と液体人間」の小泉一、特技監督円谷英二。新人の野村浩三・園田あゆみが主演するほか、伊藤久哉・千田是他・平田昭彦らが出演する。


陸・海・空と死角なしの大怪獣に、超兵器の登場と見所も多い。

ゴジラにしろラドンにしろ人類の過ちから誕生したにもかかわらず、人類との共生が許されず滅ぼされる悲しい存在。その延長線上にあるバランなのだが、テンポが速いこと、ヒステリックなまでのバランへの攻撃に気が削がれてしまうのが残念。