白い船
何でもないことがじわじわと心に来る映画。
白い船(2001)
島根県、児童数10数名の塩津小学校。ある日6年生の好平が校舎の窓越しに白いフェリーを見つけ、やがてそれは生徒のあこがれの的に。新任教師の静香は船長に手紙を出そうと提案。塩津小とフェリー船との文通がはじまる。Movie Walker
錦織良成監督による「島根3部作」の第1作。
以前に紹介した『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の監督作品。
この映画に対して、出来過ぎだと嫌味を言う輩を可哀そうに思う。つまらない毎日を送っているんだなあと。
日常の中に現れる僅かな変化に気づく子供たちの感性のすばらしさ。
繋いできた伝統を伝える側の真剣な姿と受け継ぐ側の真摯さ。
人を想う気持ちと信頼。
繋いでいくことの美しさを淡々と語っている。
ただ皆に手を振っているだけなので、涙がこみ上げてくる。
心の純度に打たれてしまう。こんな心の持ち様は今の自分の日常では体験することができないのだと思う。
この映画は実話が元になっている。しかし、モデルとなった平田市立塩津小学校は閉校、九越フェリーの航路および船舶も姿を消している。
映画の世界であっても追体験させてくれることに感謝する。フィクションの世界にしかもうこんな世界はないのだと思うと、寂しくもなる。そして、そんな心暖かき人々に再会するために、繰り返し観てしまう映画なのです。
フイルムから起こした非常に手のかかったデジタルリマスター版Blu-rayがある。
鮮烈な夏の空と海がそこにある。美しい映像と音響を楽しむなら、この盤に限る。