120rpm

ミル、キク、モノ、コト

東宝特撮映画の世界 - 1950年代(ホラー映画) -

透明人間
1954年度作品
●監督:小田基義
●製作:北猛夫
●原案:別府啓
●脚本:日高繁明
●撮影:円谷英二
●特技指導:円谷英二
●音楽:紙恭輔
●美術:安倍輝明
●録音:藤縄正一
●照明:岸田九一郎
●出演:河津清三郎(南條)/高田稔(矢島)/土屋嘉男(小松)/植村謙二郎(健)/水野匡雄(ジョー)

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石店を襲撃した男は、何故か顔を包帯で覆っていた。第二次大戦中に透明人間部隊が存在していたことから、犯人はその生き残りである可能性が示唆される。事件を追う事件記者の小松は、宝石店に来ていたというサンドイッチマンのピエロに疑惑の目を向ける。その男のアパートには盲目の少女がおり、ピエロの男は彼女にプレゼントするためのオルゴールを買い求めていたのだった……。

日本SF映画界の記念碑的傑作。操演と合成という透明人間には欠かせない特撮テクニックを駆使して、戦争の傷を負って生きねばならぬ透明人間の悲劇を描く。

ゴジラ(1954)」に次ぐ東宝の怪奇スリラーで別府啓の原案を日高繁明が脚本を書き、「幽霊男」の小田基義が監督に当る。撮影・特技監督は「ゴジラ(1954)」の円谷英二である。出演者は「幽霊男」の河津清三郎、「お夏清十郎」の三条美紀「あんみつ姫」の藤原釜足、「継母」の高田稔、「地獄への復讐」の植村謙二郎のほか村上冬樹、土屋嘉男、恩田清二郎、童謡歌手の近藤圭子など。


自らを「軍国主義が生み出した怪物」と呼ぶ透明人間には、フランケンシュタインの怪物に似た哀しみがにじみ溢れている。ストーリーを損なわない特撮も素晴らしく、特に佇立する半透明なひとがたが怪奇性をよく表現している。盲目の少女の声が後の悲劇を予感させる悲しみを帯びている。

 

美女と液体人間
1958年度作品
●監督:本多猪四郎
●製作:田中友幸
●原作:海上日出男
●脚色:木村武
●撮影:小泉一
●特殊技術:渡辺明/荒木秀三郎/向山宏/有川貞昌
特技監督円谷英二
●音楽:佐藤勝
●美術:北猛夫
●録音:三上長七郎
●出演:佐原健二(政田)/平田昭彦(富永)/白川由美(新井千加子)/小沢栄太郎(宮下刑事部長)/田島義文(坂田刑事)

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ある夜一人の男が交通事故で死ぬが、その死体はあとかたもなく消えていた。
現場にあった大量の麻薬から密売の仲間割れ事件と思われたが、捜査を担当した富永刑事は、友人の科学者・政田から、大量の放射能を浴びることで人間が液体化するということを聞かされる。
やがて一連の犯行は、原爆実験の巻き添えで液化した人間、液体人間の仕業であることが判明する。大都会を徘徊する異形の殺人者に対し、捜査陣は政田の協力を得、ついに下水道へと追いつめるが・・・。

東宝の特殊撮影技術を駆使した怪奇活劇篇で、海上日出男の原作を、「地球防衛軍」のコンビ、木村武が脚色、本多猪四郎が監督、「花嫁三重奏」の小泉一が撮影した。特技監督円谷英二。「花の慕情」の平田昭彦、「弥次喜多道中記」の白川由美佐原健二小沢栄太郎、田島義文らが出演。色彩はイーストマン・カラー。


溶けた人間の描写が怖い。液体人間になってもまだ人間としての意志を持っているのもまた怖い。
ラストの下水道の場面は、液体人間の動きでその意志と、人に戻れない悲しみが表現されていて秀逸。『ゴジラ』が『原始怪獣現わる』をヒントにしたように、このラストシーンは『放射能X』がヒントになっているようにも思える。